『人間』

又吉直樹(著)

(毎日新聞出版)

 

お笑い芸人であり、作家でもある又吉直樹さんの長編小説。

読み終わった感想は、ああ長かったな、というものだったのですが、読んでいる間はずっと楽しかったです。

なんだか、又吉さんが隣にいてずっと自分に向かってだけ話しかけてくれていたみたいな感覚がありました。だから、長かったといっても、冗談みたいに幸福な時間でした。

小説は、一人の人間の内面の世界を、それもだいふ厚みのある暗い地下層の部分とも言える場所を、不器用に曝け出されているみたいな感覚でもあり、だからとても長くてキリのない話のようにも思えたんだと思います。

語り手であり物語の核的人間(主人公ですね)である男が38歳の時点から19歳の頃の自分やその頃関わった人物のことなどを思い返していく展開なのですが、何かしら美術や芸術に関わっている若者たちが集まった「ハウス」で暮らしていた時代の話が語られます。

主人公(永山)が、当時の友人の一人と再会する場面での会話は、力が抜けすぎていてちょっと笑ってしまいました。

太宰治の『人間失格』にも触れているところがありましたね。ゴッホの絵が出てきていた時点で、なんとなく繋がっているのかな、とは思っていたのですが、改めてこちらも読み返したくなりました。

後半、沖縄に舞台が移って家族の話が中心になる辺りで、宗教の事に触れていたのが気にかかりました。ここで触れられている宗教感と、太宰治から繋がる自意識とかエゴイズムとの繋がりとか、色々考えました。

あと、主人公だけでなく、小説に出てくる人物の中には又吉さんとダブって読めてしまう人物もいて、色々な角度から又吉さんを楽しめる小説だったようにも思います。

又吉さんはきっと、今の時点での自分を見つめ直したくて、これを書いたのじゃないかな、誰かの評価とか文学的立ち位置とか関係なしに、という気がしますし、そういう作品だったのかな、と思います。