[短篇]

『ウィズ・ザ・ビートルズ

          With the Beatles』

村上春樹(著) 

(『文學界』2019年8月号に掲載)

 

『文學界』に、連作短編の一つ(その4)として掲載された村上春樹さんの作品です。

「僕」という村上春樹さん自身を思わせる人物の一人称語りで綴られていて、いわゆる私小説的な形を取っています。

特にビートルズが好きだった訳ではないけれど、いつもビートルズがBGMのように何処に行っても流れていたような時代。

そんな時代に青春を過ごした「僕」の、甘く幼い恋の物語が描かれていて、しかしラスト付近で様相がガラリと変わる仕掛けが待っています。

文章に遊び(余白)があって、言葉の巧みさと情緒でごまかされてしまうのかと思いきや、かなり計算された構成になっています。

それに気づきはじめるのは、物語の中盤辺りなのですが、そこに登場してくる恋人のお兄さんの人物造形が面白くて、サリンジャーの短編に出てきてもおかしくない雰囲気(味わい)があります。

いい短編でした。

同時に掲載されている「「ヤクルト・スワローズ詩集」」と合わせて、なかなか読み応えがあったかな、と思います。