『デバッガー』

金原ひとみ(著) 

(『新潮』2019年8月号に掲載)

 

35歳でクリエイティブディレクターという肩書きをもつ主人公の女性(「私」)が、11歳年下の部下の男と交際をスタートさせたことで、美容整形地獄に嵌っていき……という物語。

35歳という、20代の華やかさをまだ覚えているのにそこからは遠ざかり、40代という年代の入り口が見えてきているという微妙な立場の独身の女性の、リアルな焦燥とか諦めとか開き直りが実に鮮やかに描かれていると思いました。

もう書き古されているとも言えるテーマかもしれませんが、言葉に鋭さや緊張があるので、各所に突き刺さってくるものがあります。

これは、おそらくは作者が等身大の痛みを注入しているからだろうと思える強度なので、共感出来ました。

一人の男との恋愛だけを成就させて結婚、出産というスタンダードな人生を送る女たちの在り方を「RPG」、その場限りの恋愛を繰り返してしまう自分の在り方を「クリアの存在しないパズルゲームの世界にいるようだ」という表現で捉えるところなど、なかなか面白い例え方だな、と思ったりして読みました。

ラストは、切なくて良かった。

ちなみにデバッガーとは、バクを修正するためのプログラムのことみたいです。