『淵の王』 舞城王太郎(著) (新潮社)

三部作になっていて、中島さおり、堀江果歩、中村悟堂と、各章ごとに主人公は変わり、ストーリーもそれぞれに個別な展開をします。しかしながら、どこか深い所にある闇を通して繋がっているという感覚があります。

くだんの三人の人物を、彼らの至近から見つめる特別な存在がいて、それは実態の掴めない不思議な影のような存在です。

このよく分からない何者とも知らない存在達によって物語が語られていく、という不思議な小説で、文体は軽く、会話も多いので読みやすく、そこに漫画やホラーの要素が加わっているので、楽しく読める内容になっていると思います。

どこか人をくったようなふざけすぎた文章の中に、リアルに生きている若者の内面世界がのぞき見てえてきて、その生々しい鮮度が、舞城王太郎さんらしいかな、と思いました。