『先生と私』

畠山丑雄(著) 

(『群像』2019年6月号に掲載)

京都を舞台に展開される大学生たちの恋愛譚。

本作に登場する「先生」は、何年も留年を繰り返している現役の小説家で、夏目漱石の『こころ』に登場する「先生」を彷彿とさせます。

現代小説でありながら、古典文学を読んでいるかのような雰囲気がする作品です。

読みやすく面白かったのですが、何代にも及んで引き継がれている「先生」という存在やその制度(?)がやや謎過ぎて、主要人物である「先生」の人物像が、せっかく魅力的に描かれているにも関わらず、ぼやけて感じられてしまったことが残念でした。

作品が隠していた秘密も、漱石の『こころ』が隠したものに比べるとやはり物足りない印象を受けてしまうのも、作品がくだんの古典の雰囲気を纏ってしまっているので、勝手な比較が生まれてしまうから仕方のない結果でしょう。