『しずけさ』 町屋良平(著) (『文學界』2019年5月号に掲載)

前職をクビのような形で自主退職した主人公の「かれ」(20代前半)は、実家に戻り親と同居生活。昼間はほとんど眠り、夜になると起きて近所を散歩し、何をするでもなくいつもの川べりで時間を過ごす。

そこには、夜の間居場所をなくした小学生の男の子がいて、2人は奇妙な交流をはじめる。

大人になりきれない大人と、子供であるが故に行き場をなくしている少年。

奇妙な時空の歪みさえ感じさせる夜という時間の静寂が、押し殺された2人の心の叫びを吸収するかのように広がっていて、不思議な読み心地でした。

大人と子供なのに、2人が全く同じ時間軸にいる少年同士みたいな関係で、そこにちゃんと友情が芽生えている感じなのも良かったかな、と思います。