『夏物語』(後篇)

川上未映子(著)

(『文學界』2019年4月号に掲載)

 

芥川賞受賞作品である『乳と卵』を新たに書き直して、さらに主人公夏子のその後を描いた『夏物語』。その後篇です。

前篇では見えなかった、作者が何を訴えたくて、あるいは見つめなおしたくて書いたのか、という疑問への答えが、後篇を読んで少し分かった気がします。命ってなんなんだろうな。ここに描かれたのは、そんなごくありふれた問いかけかもしれませんが、単純に、ダイレクトに、思考がそこに絞られていく感覚はありました。

愛の形が多様性を認める世界の中で、本来の形を求めて彷徨っているという印象も受けました。心が多様性を認められるならば、確かに生き方の形もさらに多様性が認められるべきであり、今はその過渡期で、より良い形をちゃんと模索出来るように、文学でできることを作者はやってみたかったのかな、などと勝手に思考したりしながら読み終えました。