2019年本屋大賞ノミネート作品 『ひと』 小野寺史宜(著) (祥伝社)

(※以下、多少ネタバレあり)

高校生の時に父親を亡くし、二十歳で母親を亡くして大学を辞めざるをえなかった青年が、コロッケ一つの縁から総菜屋で働くことになり、様々な人との出会いや交流を通して成長し、人生の目標を見つていく、という青春ストーリー。

家族を亡くす悲しみと同時に、そのことによって人がどれだけ社会的経済的に危険な立場に置かれるか、というリアルな感覚には、ハッとするものがありました。

弱い立場になった主人公にたかってくる親戚の男など、絵に描いたような利己主義な大人も出てきますが、全体的にはどちらかというと親切な普通の人たちが多く登場して、主人公を助けてくれたりします。

極端な善人も悪人もいない、けれど人情はある、というところが妙に腑に落ちる感じとしてありました。主人公青年の、キラキラしすぎてないピュアさが良かった気もします。