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『ローパス・フィルター』

宮内悠介(著)

(『新潮』2019年1月号に掲載)

 

ローパス・フィルターというは、作中でも触れられていますが、本来は高周波、つまり高い領域の音だけをカットして、低音だけを残すフィルターの事なのだそうです。おそらく、楽曲の作成などで使われるものなのでしょう。

本作では、SNSからある特定の兆候を持つユーザーのみを選別して排除するという、画期的であると同時に倫理的な問題を抱えたアプリの一機能として登場してきます。

語り手である「わたし」は、このローパス・フィルターなるアプリが生み出された背景や、同アプリによって自殺に追い込まれた人物の家族、開発者である男などを取材していて、そのレポートのような内容になっています。

今現在、私たちがSNSを使う上で直面している問題の一つが思想的な「雑音」なのだとしたら、フィルターで要らない音をカットしてしまえばどうなるか……という発想の先にある仮想現実ですが、近い未来に同じことが起こったとしても、もしくは現在進行形で知らぬ間に既に巻き込まれていたとしても、決しておかしくはないというリアル感があります。

短篇ですが、淡々とした文章の中に潜む悪夢のような現実の恐さが忍びよってきて、考えさせられる作品でした。