『夜神楽の子供』

小山田浩子(著)

(『群像』2019年1月号に掲載)

 

小山田浩子さんの短篇小説。

中年の独身女性(「私」)が、急に思い立って田舎の実家側にある神社で毎年行われている夜神楽を観るために、里帰りするお話。

夜神楽というのは「私」にとって、既に他界している祖父母や、成人してほとんど会うことのない弟(その子供時代の記憶)と深く繋がっています。田舎で彼女を迎える両親は、この思い出の外側にしかいないかのようです。

彼女は弟にも連絡をとって、里帰りを促すのですが、返事はないまま。実家に帰った彼女は、母親の手料理のすき焼きを両親と食べてから、神社へ出掛けて行きます。そしてひとり神楽を観覧していた彼女は、突然肩を叩かれて、振り返るとそこに弟がいて…という展開。

神楽が催される夜の神社の境内という場所が、どこか日常とは切り離された空間として広がっていて、そこには時間さえ超越してしまいそうな幻想感が漂いだしています。

「子供」という、ある種の神秘性を持った存在を介して、過去と現在、記憶と現実が繋がり、神楽の夜は怪しく立ち上ってきます。

書かれてはいない部分に、弟を中心とした家族の綻びやすれ違い、歪み、といった影も見え隠れしていて、この影の輪郭が、ラストのそこはかとない不気味さとうまく絡まっていて、効果的に作用していたという印象です。