2019年本屋大賞ノミネート作品 『さざなみのよる』 木皿泉(著) (河出書房新社)

 

『昨夜のカレー、明日のパン』で、2014年の本屋大賞第2位になった、夫婦脚本家の木皿泉さんの作品。

43歳で癌で亡くなった小国ナスミ。

その死と直面することになるナスミ自身をはじめ、家族や親戚、友人……ナスミに繋がる様々な人々の織りなす心の物語です。

ナスミの死を悲しむ人々のいる反面、当のナスミ自身はどこか悟りのような境地で、死を受け入れていて、死が特別でも全ての終わりでもないとする姿勢を示していて、それが自然に伝わってくる内容でした。

この本を読む多くの人がナスミの死を、やがて迎えることになる自身の死や、大切な人のそれと重ねて読むのではないでしょうか。またそのように感情移入せずにおられない作品であるように思えます。

脚本家であるだけに、登場人物たちの個性豊かな人物造形やその背景、会話の軽妙さなど、物語としての面白さも備えていて、ドラマを見ているようでした。

死を見つめることで、生きることの意味を照らし出してくれる。悲しいけれど明るくて、優しい気持ちにもなれる作品だったと思います。