文學界2018年4月号

『彼は本当は優しい』

古市憲寿(著)

(『文學界』2018年4月号に掲載)

 

 

 

情報番組などのコメンテーターとして有名な社会学者の古市憲寿さんが、小説デビューというので、ちょっと読んでみました。

やや軽薄な性格の持ち主らしい、ニュース番組のメインキャスターの男を主人公にした小説で、文章は悪くないと思いました。

母親の病気をきっかけに、希薄な家族関係に微妙な変化が現れ、主人公の心情も揺すぶられていく過程などが詳細に描かれていて、社会学者としての視点もそこにはあるのだと思います。

展開の仕方や人物造形などもよく描けているし、いい作品だと思うのですが、なんとなく題名が作品の全てを掌握してしまっている感じがして、そこだけもったいない気がしました。