1ミリの後悔もない、はずがない

『1ミリの後悔もない、

     はずがない』

一木けい(著)

(新潮社)

 

 

 

【王様のブランチ】で紹介されていて、気になったので手に取りました。

短篇集なのかな、と思って読み進めてみると、一つ一つのお話は少しずつリンクしていて、全話を読み終わってみると、長い映画を観終わったような実感がありました。

一話目の「西国疾走少女」が、私は一番好きですが、この恋の結末がどうなったかは、冒頭の時点で主人公がイカをさばいているという描写の時点で、ある程度予測できたものであったと思います。

けれど、中学2年生だった少女が、台所でイカをさばく主婦になるまでの道のりには、当然さまざまなドラマがあったはずで、その辺の手掛かりになる挿話も挟みながら、リンクした幾つかの物語が主人公を替えつつ繋がっていきます。

最終話の「千波万波」で、物語がもう一度繋がった時には、少なからず感動がありました。(”千波万波(せんぱばんぱ)”って、素敵な響きの言葉ですよね)

キラキラした青春小説、と言ってしまえばそれまでかもしれないですが、それ以上のものはありました(絶対に)。

とくに、文章の節々から、痛みを伴った叫びに近い声が聞こえてくるような感じなど、ぞくぞくさせられました。

淡々と抑えた表現になっているし、客観的な描写や会話と展開だけしかなくても、それでも行間を切り裂いて立ち昇ってくるような、不思議な声(登場人物たちの、心の声)が、確かに聞こえました。

とても熱いものを芯に持っているのに、最後まで爆発させずに書きつづることは、どんなに難しい事かと思います。

とても魅力的な文章を書く人だな、と感じました。