文學界2018年1月号

《短篇》

『穴と滑り棒の謎あるいは老俳人はいかにしてマセラティ・グランカブリオを手に入れたのか』

松浦寿輝(著)

(『文學界』2018年1月号に掲載)

 

 

俳友のマルコに招かれ、リグリア海を望むイタリアの別荘に、滞在することになった月岡。やがて彼は、そこでちょっとスリラーな体験をすることになる。

別荘のオーナーであるマルコの書斎には、直径1メートルほどの穴と、そこから上下に伸びる滑り棒のような金属棒があり、月岡は、これがずっと気になっていた。

別荘と友人マルコに隠された秘密に月岡が気づいたとき、穴と棒の謎も解けるのだが……

松浦寿輝さんの、短篇小説です(題名が、非常に長いですが)。

美しく穏やかな風情の中に、ただ浸る日々。そんな静けさの隣りで進行する狂気を秘めた展開は、読みごたえがありました。狂気の裏で、リグリア海と駿河湾が繋がる、そんな展開も良かったです。