意識のリボン

『意識のリボン』

綿矢りさ(著)

(集英社)

 

 

 

表題作他、全八篇からなる短篇集です。

以下は、表題作意識のリボン』の感想です。

 

【『意識のリボン』感想】

母親を亡くした二十代と思われる女性が主人公です。

二歳の頃、自分が母親の胎内にいた時の記憶を話していた主人公の「私」は、大人になるとそんな記憶をすっかり失くしてしまっています。

母親が亡くなったあと、”私は絶対に長生きするからね”と父親に誓っていた「私」でしたが、間もなく交通事故に遭い、生死の狭間をさ迷います。

これは、三途の川を渡りかけた「私」が体験した、”意識の旅”のような物語で、「肉体と意識」、「世界(宇宙)と個」の関わり方のようなものにまで触れられています。

いわゆる、「死にかけて戻ってきた人」の意識の記憶が描かれているのですが、短い展開の中で、宇宙の真理に近づくことのできる内容だったかと思います。