文芸 2017年 02 月号 [雑誌]

『聖ミクラーシュの日』

青山七恵(著)

(『文藝』2017年春号に掲載)

 

 

 

主人公の「わたし」は、15年来の親友、美南子と二人で、チェコに旅行に来ていた。

しかし、そ日の朝になって、自らのルーズな性格がもとで、美南子と喧嘩別れをしてしまうことに。

そのため、見知らぬチェコの街を、ひとり観光してまわることになった「わたし」は、なかなか昼食をとるレストランも見つけられずにいた。

諦めかけていたが、ようやく理想通りの店にたどり着いた「わたし」。

ところがこの店で、思わぬ恐怖体験をしてしまうことに……。

 

青山七恵さんが、『文藝』に発表された短篇小説です。

短篇と言っても、なかなかに充実した内容で、とても面白かったです。

作品の中でも説明されていますが、聖ミクラーシュというのは、英語でいう聖ニコラス、つまりサンタクロースのことです。

物語の舞台になっているチェコでは、12月6日に「聖ミクラーシュの日」という伝統行事があって、この前日の5日の日には、聖ミクラーシュが天使と悪魔を連れて、子どものいる家々をまわっていくそうです。そこで、あらかじめ親たちから渡されていたお菓子なんかを、聖ミクラーシュが子どもたちに配る、ということのようです。

物語は、どうもルーズな性格の持ち主であるらしい主人公が、しっかり者の親友と別れて、ひとり行動をすることになる、12月5日の、チェコで体験した出来事が描かれています。

女同志の友情が、辛口なユーモアに包まれて、こんなにも素直に胸に飛び込んでくるなんて、さすがだな、とつくづく感じ入りました。