文芸 2017年 02 月号 [雑誌]

 

『愛すること、理解すること、愛されること』

李龍徳(著)

(『文藝』2017年春号に掲載)

 

 

死にたくなったら電話して』で、第51回文藝賞を受賞した李龍徳さんの、中編小説です。

4人の男女が、大学時代に同じサークルだった女の妹である鈴田涼子なる人物から別荘に招待され、そこへ向かう新幹線の車中という場面から、物語ははじまります。

4人のうち二人は夫婦、二人は恋人同士、という関係で、4人を招待した鈴田涼子の姉、つまり4人と同じサークルだった女性は、自殺しているようです。

なんだかミステリー小説のような冒頭の気配に、ただならぬ事件が起きるのかと期待しつつ読み進めたのですが、どうやら本作の真の狙いは、ミステリー仕掛けの展開にはなかったようです。

友達から恋人へ、恋人から夫婦へ、子供が出来れば父親と母親へ、離婚すれば……と、徐々に変化していく男女の微妙な関係性や、女同志の友情や嫉妬、母性、母性を強いられる立場からの反論、といった、男と女がそれぞれの人生を生きていく上で直面していく様々な問題に、向き合った内容になっています。

会話文が多く、説明的なことの多くは会話の流れの中でなされ、地の文での解説を極力に抑えているようだったので、小説を読んでいるというよりも、なんとなく劇を観ているような感覚がしました。