ハッチとマーロウ

『ハッチとマーロウ』

青山七恵(著)

(小学館)

 

 

双子の姉妹、ハッチマーロウが11歳の誕生日を迎えた日、母親から、”今日でママは、大人を卒業します”と告げられる。

大人を卒業した母親は、家事をこなしたり、ハッチとマーロウの面倒をみることをやめてしまい、何もしないぐうたらな”だめ人間”になることにしたらしい。

そしてハッチとマーロウに向かって、”今日からふたりは子ども卒業”と言う。

こうしてハッチとマーロウは、大人をやめた母親の代わりに、突然、大人になることになった。

本作は、『ひとり日和』で、第136回芥川賞を受賞した青山七恵さんが、長年温めてきた構想から生まれたそうです。

少し風変わりな母親(ミステリー作家)と、その娘である双子たち一家の物語で、ハッチとマーロウの視点で交互に描かれます。

子供の世界だけでなく、彼女たちを取り巻く大人の世界の色々な事情も垣間見れる仕立てになっていて、ラストに向かって、家族の秘密が明かされます。

なんと言っても魅力は、ハッチとマーロウの明るく澄んだ性格でしょうか。

ある日突然、自らの仕事や責任を放棄してしまうような母親のことを、少し変だと思いながらも受け止め、前向きに協力して生きていくふたりの姿は、健気でもあり、かわいらしくもあります。

イギリスの児童小説家イーニッド・ブライトン『おちゃめなふたご』に、強く影響を受けて書かれたとのことですが、私はエーリッヒ・ケストナー『ふたりのロッテ』を思い出しました。