本を守ろうとする猫の話

『本を守ろうとする猫の話』

夏川草介(著)

(小学館)

 

 

 

幼いころに両親が離婚し、さらに母親もなくした主人公(夏木林太郎)は、古書店を営む祖父に引き取られ、以降祖父と二人暮らしだった。そして高校生になったある日突然、その祖父も亡くなってしまう。

無口で友達が少なく、引きこもりがちな少年である林太郎にとって、祖父が作り上げた『夏木書店』こそが、唯一の安息所であり避難場所だった。しかし、祖父が亡くなった今、彼は叔母の家に引き取られることが決まり、数日中には店を去ることになっていた。

そんな事情から憔悴していた林太郎の前に、突然言葉を話す、奇妙なトラネコが現れて、本を守るために力を貸してほしいと言ってくる。

夏川草介さんの名前は、デビュー作でもありベストセラーにもなった第10回小学館文庫小説賞受賞作『神様のカルテ』でおなじみだと思います。

本作は、「文学」とか「小説」といったものを、やや抽象的に描いていて、ファンタジーノベルとしては珍しいのかもしれません。

小説的な技巧とか解釈とか構築とかいうより、ほとんど情熱とか感情で書かれているという印象で、猫が登場するのは猫好きだからでしょうか。