こんにちは、『tori研』です。

やっと桜が咲きましたね~(^^♪

と思ったら、もう散ってしまうんですね~(*‘ω‘ *)

今回は、すばる文学賞 第34回~第37回を研究してみます。(第41回の締め切りは終わってしまいましたが、第42回を狙って、研究は続きます!(*‘ω‘ *))

以下が受賞作の一覧です。

第34回

(20010年)

『トロンプルイユの星』

 米田夕歌里

(→読書感想はこちら)

第35回

(2011年)

 『フラミンゴの村』

 澤西祐典 

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第36回

(2012年)

 『狭小邸宅』

 新庄耕

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『黄金の庭』

 高橋陽子

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第37回

(2013年)

『教授と少女と錬金術師』

 金城孝祐

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『左目に映る星』

 奥田亜希子

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【第34回】

『トロンプルイユの星』(米田夕歌里)

主人公の藤田サトミは、小さなイベント会社で働く、ごく普通の若い女性ですが、自分が時々おかしな体験をしていることに、気づきはじめます。

自分が感じた地震のような大きな揺れを、周囲の人間はなにも感じてなかったり、彼女の周りから人や物が消えていき、消えた人や物たちは、その存在そのものが世界から消え去っていたり……。

おかしいのは自分なのか、自分を取り巻く世界の方なのかと混乱します。

この作品は、自分の感覚や認識の有り方が他人と違っていることの恐怖や違和感を描くことで、当たり前だと思っていたそれまでの認識が覆されていき、自分の人生が見えない大きな力で支配され、動かされているといった不条理な世界を浮き彫りにしていきます。

そこから個(ミクロ)と世界(マクロ)の関係性を見つめているのだと思います。

物語りの主軸であるパラレルワールドの発想自体は、それほどに新しいものではありません。

が、ごく普通の生活をしていた主人公が、不思議の国に迷い込んでいく道筋と、その展開の仕方は自然で臨場感があります。

また、感覚的なものを言語化し映像として分かりやすく展開した上で、ストーリーとも繋げていく手腕は、この作者独特のものだと感じました。

 

【第35回】

『フラミンゴの村』(澤西祐典)

”ベルギーの片田舎の農村で、村中の女たちがフラミンゴに変身してしまう!”

という、一見、荒唐無稽のようなお話ですが、残された男たちの側の戸惑いを描くことに作品の主軸を置いていて、集団の中で芽生える他者への懐疑や同調、自己保身、など、様々な心理的葛藤が展開とともに織りなされ、人間洞察の優れた作品になっています。

場所が日本ではなく、時代も現代ではないので、どことなく異国の民話やおとぎ話のような情緒があります。

(女たちが変身した)フラミンゴたちが、生物としての現実的な側面を持つ(排泄をしたり、臭いがしたり、煩く鳴きわめいたり)一方で、どこか女性的なもの――それも、男たちが心惹かれる神秘に満ちたもの――として妖艶に描かれていて、幻想的でもあります。

一番、凄いと思わせたのは、作者がこの奇妙で妖しくも素晴らしいアイデア(物語り設定)に酔っていないところです。

冒頭から最後まで一貫して冷静で、文章に無駄がありません。

つい大げさになりそうになる場面でも、筆は抑えられていて、作品が幻想的な飛躍をみせるラストのくだりまで、読者を飽きさせることなく導いてくれます。

その安定感が、とても新人の作品とは思えない完成度と豊かさに、繋がっているんだと思います。

 

【第36回】

『狭小邸宅』(新庄耕)

主人公は不動産屋に勤める青年ですが、労働環境の劣悪な職場で、なおかつ営業成績も悪いので上司からは叱責罵倒されてばかりの日々。

元々、就職した当初から、不動産業そのものに興味はなく、この職場にこだわる理由も特にないのに、なぜか主人公は会社を辞めません。

それどころか、追い詰められていくほどに、むしろ不動産屋(家を売る)という仕事に執着し、奮闘します。

ある一つの出会いから、彼は徐々に仕事のノウハウを会得して、自らを成長させ、成功の道筋を築きます。

不動産屋の知られざる裏側をリアルに描き出していて、引き込まれずにいられない小説です。

しかし、それだけで終わっていたら、ありがちな「ビジネス成功物語」(それだけでも、十分に面白い内容)ですが、視点はもう一段深い場所を捉えていて、現代社会における労働者の心の闇に迫ります。

 

『黄金の庭』(高橋陽子)

不思議なことが日常的に起こる町(「黄金町」)に、夫婦で引っ越してきた主人公「わたし」が、仕事を通じて町の人々と関わっていきながら、町の歴史を知り、奇妙な体験や恋愛もする、というストーリー。

一見、現代日本のどこにでもありそうな町なのに、どこか日本昔話チックな出来事が起こりだし、しかも主人公も町の人たちも、それをごく当たり前のことのように受け入れて、淡々としている。

日常の中にある「奇妙」が日常化しているというか、普通の生活空間と地続きになった不思議の国(町?)がそこにあるという、そういうナンセンスな面白さ、なんだと思います。

つまり、合理的な論法を当てはめて解析できない、不思議な力がこの小説にはあって、そこにエネルギーを感じました。

それに比べると、物語の中心になる千寿寛治という一風変わった男も、彼をとりまく女たちとの一連のストーリーも、どこかメロドラマのような印象だった気がします。

けれど、「わたし」が、千寿寛治を介して仕事に取組み、その過程で黄金町という不思議な町に触れ、どんどん取り込まれていく気配の中には、やはり何ともいえない魅力を感じました。

上手く伝わるか分かりませんが、明るさと不気味さが融合して独特の色彩で、きらきら輝いている感じ……とでもいうんでしょうか。

 

【第37回】

『教授と少女と錬金術師』(金城孝祐)

 

薬学部の学生(主人公)が、指導教授から育毛と油を関連付けた研究を手伝わされることからはじまる、珍妙な小説です。

題名からも推測される通り、錬金術が主要な内容に組み込まれていて、自然学の要素が作品を彩ります。

冒頭は至極真面目なトーンであるのに、途中から一変、ややギャク漫画のような可笑しな描写や展開が待ち受けていて、驚かされます。

やがて物語は、一風変わった少女と主人公との淡い恋愛モードに切り替わっていきますが、どこまでもつかみどころのない印象でした。

このつかみどころのない感じが、「錬金術」という怪しげな宇宙観と、「育毛」「ハゲ」というギャク的要素を連結していて、なにかよくわからない魅力を醸しているな、と思います。

 

『左目に映る星』(奥田亜希子)

 

左目の視力に問題があったことから、ある一つの世界の真理を知り、その結果、”人間は孤独”という境地に、とらわれてしまった主人公の女。

彼女は小学生の頃、ただ一人、感覚を共有できる少年に出会います。

その少年との関りは、彼女の内面世界を大きく変えていき、やがて恋に発展します。が、淡い関係は長く続かずに終わりを迎えます。

けれどその後も少年は、彼女にとっての「理想の存在」として、心に残り続けます。

結果、主人公は恋愛のできない大人になるのですが、そんな背景を持つ彼女と、純粋なオタク男との、心の触れあいを描いた物語りです。

「視覚」という感覚を通して、主人公は「他者と自分」や、「世界と自分」ということを、ネガティブに捉え続け、オタク男の登場で、そこに変化が訪れます。

「存在」とか「孤独」という哲学的なテーマが根底にある作品ですが、「少し変わった恋愛物語」という矯味を加えることで、読みやすく、また面白い展開になっています。

 

【まとめ】

私が個人的に引き込まれて読んだのは、『トロンプルイユの星』『フラミンゴの村』『狭小邸宅』でした。

この三作品には、特に共通するものはないようですが、強いて言えば、「読ませ方の上手さ」が際立っている気がします。これは、言い換えると展開力の上手さなんだと思います。

独特な世界観を感じたのは、『黄金の庭』『教授と少女と錬金術師』です。

特に『教授と少女と錬金術師』は、やや読者を置き去りにしているような感もあるほど、自分の信じた世界を強烈に表現しているという印象でした。そういう意味で、非常に大きなエネルギーを感じます。

『左目に映る星』は、「個」の抱える感覚の違和感から「世界」との関係性に思考が展開していくあたり、『トロンプルイユの星』と共通しているものを感じました。

こういうテーマは、個別に(つまり無数に)あるものなので、独自の展開と表現法さえあれば、挑戦することも可能性としてありなのかもしれません。(ただし、似たようなテーマで書かれたものに、どこまで興味を持って貰えるかは疑問ですが)

 

 

以上、六作品の個人的な見解のまとめと、研究でした。

まことに簡単ではありますが、今回はこの辺で…:;(∩´﹏`∩);:

もっと詳しくは、各読書感想を読んでくださいね。

 

 

次回の『tori研』は、すばる文学賞研究③として、第38回~ を予定しています。

またお目にかかれることを楽しみに、ひたすら研究に励みます。

ではでは~(@^^)/~~~