祐介祐介

尾崎世界観著

(クリープハイプのボーカル)

 

/文藝春秋

 

尾崎世界観さんを知らない方のために説明すると、クリープハイプというバンドのボーカールとギターをやってる方です。この作品がたぶん初めての小説のようです。過去にも辻仁成さんや大槻ケンヂさんなどバンドマンで小説を書いている人は結構いると思うので、この経歴は特別ではもちろんありません。ここで敢えて読書感想として紹介しようと思うのは、もしかするとせっかくの才能をたった一作で終わらせてしまってはもったいない、からで、次回作も書いてもらいたいという願望からです。

では、そんなに素晴らしい作品なのか、と言われると、正直な感想としてはまだまだ書ききれていない感じがする、と答えるしかないようです(批判ではありません。伸びしろがいっぱいある人だな、と感じる、まだ書ける、ということです)何より、文体がいいと思いました。素直な書き方ですし、感触や不快感やその場の臭いや空気感、そこに繋がっていく主人公の内面の鬱屈描写、というものがきちんと描けています。これはかなり高いレベルであると思います。売れないバンドマンの日常を書いていることや題名からも(尾崎世界観さんは「尾崎祐介」といいます)また一人称の語りで書かれているので、個人的な小説だとも言えるのかもしれませんが、ラストまでの運びなどは、ちゃんと文学作品の形をとっていると思います。欲を言いますと、今後はクリープハイプの尾崎世界観という冠を脱いだ形で、ぜひ小説を(音楽活動と平行しながら)書いて行ってほしいです。以上。